シリーズ 定款を読む(2) 「NPO法人の役員」

シリーズ 定款を読む(2) 「NPO法人の役員」

定款は、その法人の憲法とも言われ、法人の根本原則を定めた最高法規に当たります。NPO法人の運営・管理については、法律による縛りが少なく機関設計・業務執行はNPO法人の自治に委ねられています。しかし、特定非営利活動促進法(NPO法)上、NPO法人には「社員総会」のほかに、「3人以上の理事」「1人以上の監事」が必要とされています。「3人以上の理事」「1人以上の監事」というのがNPO法人における役員です。今回はNPO法人の定款の役員に関する規定を比較してみたいと思います。

NPOの理事会5類型

NPOの理事会5類型

2024.05.15

NPO法では理事に代表権と業務執行権を付与しており、NPO法人の理事はNPO法人の業務執行を行う機関になります。法上は定款変更、解散および合併を除いて、すべての意思決定を理事に委ねることも可能で、定款のつくり方によってはNPO法人の理事は団体運営に対して強力な権限を有することになります。一方、監事は、理事の業務執行や法人の財産の状況を監査する役割を持ちます。また、NPO法が定める機関とは別の機関を設置することにより、運営の適正化を図っている団体もあります。

役員の種別

代表権を持った理事の役職を「理事長」としている団体が26団体、「代表理事」が21団体、「代表」が2団体、「会長」が1団体です。定款に役員の条件を明記している団体が1団体(この法人の支援対象となる者は、この法人の役員になることができない)、代表権を持った理事になれる条件を明記している団体が1団体(理事長は医療従事者であること)あり、複数名の代表権を規定しているNPO法人は50団体のうち8団体ありました。

理事長や代表理事のほか、副理事長/副代表理事といった役職を定めている団体は、42団体です。42団体のうち13団体が副理事長/副代表理事とともに常務理事(7団体) 、専務理事(5団体) 、常任理事(4団体)を設置しています。副理事長/副代表理事といった役職を定めずに、常務理事を設置している団体は2団体、常任理事を設置している団体は1団体です。特別顧問理事(1団体)や名誉会長(1団体)、会計役(1団体)といった役職を定めている団体もあります。

理事と監事以外の役員として「会長」「副会長」「評議員」があります。理事長や副理事長とは別に「会長」や「副会長」を設置している団体が1団体、「評議員」を設置している団体が1団体あります。

役員の定数

理事の定数

NPO法上、理事は3人以上おかなければなりません。定数を「3人」に指定している団体は1団体で、6団体が「 ○ 人以上」、43団体が「○人以上 ○ 人以内」といったように幅を持たせています。「3人以上」は3団体、「5人以上」は3団体です。43団体の理事定数の下限の内訳は、3人=22団体、4人=1団体、5人=6団体、6人=2団体、7人=2団体、8人=1団体、9人=4団体、10人=4団体、15人=1団体となっています。理事定数の上限の内訳は、5人=2団体、7人=3団体、9人=4団体、10人=4団体、11人=2団体、12人=7団体、13人=2団体、15人=6団体、17人=1団体、20人=7団体、21人=1団体、30人=3団体、50人=1団体です。私が調べたNPO法人のなかで、最も幅が大きい理事定数の団体は「3人以上50人以内」です。

監事の定数

NPO法上、監事は1人以上おかなければなりません。定款で監事を2人もしくは2人以上としている団体は10団体です。それ以外の40団体は、「1人」「1人以上」「1人以上 ○ 人以内」となっています。監事の定数上限の内訳は、2人(20団体)、3人(10団体)、5人(1団体)です。

役員の選任

理事の選任

理事の選任は、「理事会で選任」としている団体が6団体、「社員総会で選任」としている団体が42団体、「理事会で選任、総会で承認」としている団体が1団体、「その他」1団体です。その他の1団体は、理事の種別により「会員の中から選挙で選任し、理事会で承認」と「理事会で選任」を分けています。理事を「社員総会で選任」としている42団体のうち1団体が「無記名投票により選任」としています。

役職がある理事の選任

代表理事/理事長、副理事長/副代表理事、常務理事、専務理事などの役職が付いた理事の選任について、選任方法について記載がない団体が1団体、「理事の互選」としている団体が45団体、「理事会の決議」が2団体、「理事会が選任」が1団体、「総会で選任」が1団体です。

監事の選任

監事の選任は、「理事会で選任」としている団体が5団体、「社員総会で選任」としている団体が45団体です。監事を「社員総会で選任」としている45団体のうち1団体が「無記名投票により選任」としています。

役員の職務

NPO法には監事の職務は列挙されていますが、理事の職務については代表権と業務執行権しか触れられていません。定款に記載された理事の職務を見てみます。

理事

43団体は理事の職務を「理事会を構成し、(法令、定款、総会および理事会の議決に基づき)この法人の業務を執行(遂行)する」と記載しています。43団体のなかには「この法人を代表し」「評議員会に出席し、評議員の意見および提案を聞く」「理事会の決議に基づき事業を分担処理する」という職務を追加している団体がそれぞれ1団体ずつあります。3団体が「理事会を構成し、(法令、定款、総会および理事会の議決に基づき)業務の執行を決定する(業務を決定する)」としており、1団体は「理事会を構成し、この定款の定めおよび総会議案、総会決定に基づく執行案件等を審議し、議決する」としています。役付理事の職務の記載はあっても、理事全般の職務について記載がない団体が3団体ありました。

正しい理事を選ぶための4つのC

正しい理事を選ぶための4つのC

2024.04.16

理事長/代表理事/代表/会長の職務

50団体のうち49団体が、理事長/代表理事/代表/会長の職務を「法人を代表し、業務を総理(統括)する」(ただし、1団体は理事全員に代表権があるため「法人を代表し」する文言はなし)としています。「特別の緊急事態にあっては理事長が全責任を負ってこの法人の方針を決定し、執行することができる」と追加している団体もあります。より具体的に「本会を代表し、理事会の決定を実施し、本会を順調に機能させる役割」「本会のスポークスマンとして、本会と他の団体、国際機関、民間組織、各国政府、マスコミ、世論との関係を担当」と記載している団体が1団体あります。

副理事長/副代表理事/副代表/副会長の職務

副理事長などを設置している団体は、それらの職務を「理事長(代表理事/代表/会長)の補佐」と「理事長(代表理事/代表/会長)に事故があるときの職務の代行」と規定しています。副理事長などにも代表権を付与している団体は3団体ありました。

常務理事

常務理事を置いている団体は9団体です。副理事長などを設置していない場合の常務理事の職務(2団体)は、「理事長(代表理事などを含む)を補佐し、理事長(代表理事などを含む)に事故あるときに職務を代行」となっており副理事長などと同じ職務です。副理事長などを設置している場合は、「(理事会の議決に基づいて)常務を処理」が3団体、「常務について代表理事または副代表理事の職務を代行」「理事会の決議に基づき、この法人の業務を取り扱う」「理事長の下にあって業務全般を総括し執行する」が1団体ずつです。定款に具体的な記載がなく「理事長が別に定める」としている団体も1団体あります。

専務理事

50団体のうち5団体が専務理事を設置しています。5団体とも異なり「本会の会議の招集手続、および議事録・書簡の作成に責任」「この法人の業務を執行する」「代表理事を補佐し、この法人の業務を掌理」「事務局を管理し、理事長に不断に業務を報告し、その指示に従ってこの法人の業務を執行する」、定款に具体的な記載がなく「理事長が別に定める」となっています。

常任理事

常任理事を置いている団体50団体のうち5団体です。副理事長などを設置していない場合の常任理事の職務(1団体)は、「理事長を補佐し、理事長(代表理事/代表/会長)に事故があるときの職務を代行」で副理事長などと同じ職務です。副理事長などと併設の場合は「会長の補佐」「副理事長を補佐」「常任理事会を構成し、この法人の業務を執行する」「代表理事および副代表理事を補佐し、業務を分担処理する」であり、常任理事の職務は団体により異なっています。

その他

上記以外の役職では、特別顧問理事は「理事としての職務を行うことに加えて、この法人の運営上重要な事項について、理事長の諮問に応じる」(1団体)、名誉会長は「理事としての職務を行うことに加えて理事長に対し、この法人の運営についての助言を行う」(1団体)、会計役は「理事会決定事項の実施に必要な会計書類に署名する権限」(1団体)です。理事長や副理事長とは別に会長や副会長を設置している場合の会長の職務は「この法人を統括し、この法人に関わる全てのことに関し助言、示唆を与える権限を有する」(1団体)、副会長の職務は「会長を補佐」(1団体)となっています。また、評議員は「この会の業務の執行について、評議員会の議決により、理事会に意見を述べ、提案をする」(1団体)と規定されています。

役員の任期

NPO法上、役員の任期は2年以内において定款で定める期間とし、再任を妨げないとされています。役員の任期を1年としているNPO法人は5団体、2年としているNPO法人は45団体です。50団体すべてに再任を妨げないという「ただし書き」がありますが、2団体は「連続して3期まで」という再任の上限を設けていました。

NPO法では役員についても最低限の規定しかなく、機関設計が自由にできてしまいます。定款を読み比べることで自分たちの役員や機関の特徴やオリジナリティもつかめます。ぜひ自分たちの定款と読み比べてみてください。

<シリーズ定款を読む>は、50のNPO法人の定款を「社員総会」「役員」「理事会」「事務局」「会員」の視点で読み比べてみる企画です。