NPOにとってボランティアは時間を提供することで団体の理念を支持する支援者であり、重要なステークホルダーです。同じ支援者でも、ボランティアはサービス利用者や会員、寄付者とは異なった思いや動機を持っています。ボランティアが辞めてしまう理由とボランティアの定着率を高める施策を考えてみたいと思います。
ボランティアが辞めてしまう( 定着しない )理由
ボランティアが定着しない、辞めてしまう理由はいくつかあります。ボランティアが辞めてしまう主な背景としては、以下のようなものがあります。
ライフステージが変化した
就職や転職、結婚、出産などライフステージの変化が、ボランティアを辞める原因になることがあります。通常、団体がこのような原因を取り除くことはできません。ボランティア以外のかかわりを提案するなど、幅広い視点で対応することが必要になります。
関心を失った
ボランティアは時間が経つにつれ、活動への興味・関心を失っていきます。また、団体の基本的な理念が十分に理解されないまま、ボランティア活動の価値や目的を見失ってしまうこともあります。
評価されていないと感じた
ボランティアは、自分の仕事が役に立っていることを知りたがっています。評価されていない、あるいは自分が十分に活躍できる場がないと、自分の努力は重要ではないと思ってしまい、やめる原因になるかもしれません。
不快な経験をした
ボランティアを受け入れる準備や計画が不十分であったり、ボランティア当日の運営が混乱していたり、その他のネガティブなボランティア体験は、ボランティアをがっかりさせ、あなたのNPOに二度と参加しないようにさせてしまいます。
燃え尽きた
ボランティア活動の状況から受けるストレスが原因で、ボランティアをする意欲が衰退し、疲れ果ててしまう状態が「燃え尽き症候群」と言われるものです。ボランティアの役割の不明瞭さ、ボランティアに対する過剰な期待(業務過多)、ボランティアに対するフォローの不足など、いくつかの要因によって引き起こされます。
ボランティアが辞めた理由は人により異なり、実際は聞いてみないとわかりません。年に一度、ボランティアにアンケートを実施してみることもひとつの方法です。NPOが提供しているボランティア活動について、ボランティア本人にどのように感じているか聞いて、NPOのボランティア・プログラムやボランティア対応について評価してもらいます。アンケート項目は以下の内容が考えられます。
- 自分の希望や経験に応じた適切な役割を担えているか
- 職員に安心して助けを求めたり、質問したりできるか
- 自分のやっている仕事が役に立っていると感じているか
- ボランティアに参加することで学びの機会を得られているか
- 他のボランティアと協力し合えていると感じているか
- ボランティア活動への意見を求められたり、意見を伝える機会があるか
- これまで以上にボランティア活動に参加したいと思うか
- 周辺の人にこのボランティアを勧めたいと思うか
ボランティアの定着率を高める施策
NPOは、3つの主要なボランティア対応を見直すことでボランティアの定着率を高めることができます。
ボランティアに感謝する
ボランティアへ定期的に感謝を伝えることで、ボランティアが定着する可能性が高まります。感謝されて悪い気持ちになるボランティアはいません。単に「ありがとう」「おつかれさま」と言う以外にも、ボランティアへの感謝の気持ちを伝える方法にはいくつかあります。たとえば、ボランティアの時間と参加状況を記録して伝えることで、正確にボランティアの貢献度合いを示すことになり、より具体的に感謝を伝えることができます。毎年(毎月)、最も活躍したボランティアを表彰という形で感謝を伝えることもできます。春の花見や暑気払い、クリスマスなど季節のイベントを開催し、楽しみながらボランティアに感謝を伝えるのもいいと思います。
ボランティアに研修する
ボランティアを始めたばかりの人向けにはオリエンテーションを行ってください。オリエンテーションでは団体の理念と取り組んでいる社会問題についての理解を深め、期待される役割、責任、業務を説明します。ベテランのボランティアには、目標の設定やリーダーシップ、ITを使ったコミュニケーションツールの使い方など役割や業務に応じた追加の研修が必要な場合があります。研修で知識やスキルを得る機会を提供しボランティアの充実度を高める一方で、ボランティアが効果的で自律した活動になります。
ボランティアのプロフィールを把握する
ボランティアに団体のことを伝えるだけでなく、ボランティアのことをよりよく知ることも重要です。ボランティアの基本的な連絡先に加えて、年齢や職業、スキルや資格、趣味・興味、活動できる時間帯といったプロフィールを収集・蓄積し、ボランティア活動とマッチングすることでボランティアの満足度を高めることができます(中には、ボランティア自身の希望によって普段の仕事とは全く異なる分野のボランティアをマッチングすることもあります)。これらの情報は、ボランティアに登録するタイミングで収集することが理想です。また、学生は自分の研究に役立てたい、就職活動で履歴書の内容を充実させたい、シニア世代は専門知識や経験を活かしたい、と思っているかもしれません。ボランティアに団体への興味を持ち続けてもらうための方法のひとつは、ボランティアが喜ぶような機会を提供することです。
ボランティアは、財産がなくても社会貢献できる手段で、学生でもNPOに参加できる機会です。学生は将来、寄付者になる可能性もあります。ボランティアを惹きつけるだけでなく、ボランティアには「活動に熱中できている」「社会や団体に貢献している」と感じてもらい、ながく関わってもらえるNPOになってください。