NPOにとって 「成功」とはどのような状態を指すのでしょうか? 「成長」とは何でしょうか?企業であれば、売上と市場シェアを高め利益を増やすことで成功や成長を測ることができるかもしれません。NPOも同じでしょうか?NPOにとっての成功や成長について考えてみたいと思います。
NPOの類型による「成功」の違い
サービス・プロバイダー型のNPOは、支援を必要としている受益者に物資、情報やカウンセリングなどのサービスを提供します。この類型のNPOにとって成功とは、相当数の人々に物資やサービスを提供し、受益者の生活を変えることになるでしょう。
アドボカシー型のNPOは、ロビー活動や立法を通じて、社会全体の変化を生みだそうとしています。この類型のNPOの場合、成功はさらに大きなスケールとなります。政策を変えることが成功のひとつと言えます。また、政策変化による影響や効果も成功を考えるうえで重要です。
NPOの成長:4つの次元
運営面の成長
NPOが最初に考えておきたい成長は、いま行っている事業(プログラムやサービス)をより効果的・効率的に、より高い品質で行うための成長です。運営面での成長を考えるためには、支出(運営コスト)を明らかにすることから始まります。スタッフへの報酬、研修・教育、ITへの投資、ファンドレイジングコストなどを明確に把握しましょう。そのうえで、新たな助成金の獲得やファンドレイジング手法の導入など収入を増加させる方法を検討します。
既存事業の成長
2つの目の成長は、既存プログラムの拡大です。十分な運営資金を確保することで、事業(プログラムやサービス)を成長させることができます。事業の成長には、より多くの受益者に支援を届けるという目標があります。多くの場合、活動時間の拡大、新しい拠点の開設、スタッフの増員などを行います。あらかじめ支出(運営コスト)を理解しておくことで、事業拡大のための試算がしやすくなるのです。いまの支援者は、団体が取り組んでいる事業の必要性をすでに理解しているはずです。既存プログラムを拡大させることは、これまでの支援者との関係を深め、拡大するプロセスとなり、新たな支援者を増やすきっかけになります。
新規事業の開発
NPOにとって3つ目の成長は、団体が提供する事業(プログラムやサービス)の種類を増やすことです。新たな事業に取り組むことは、簡単ではありません。これまでの活動の振り返りや棚卸し、計画の策定、テスト導入などを慎重に行い、新たな収益源を見つけ段階的に大きくしていきます。新たな収益源を見つけられないまま新たな事業に取り組むと、既存の事業までも不安定にするリスクがあります。
事業の水平展開(複製)
NPOの成長の4つ目は、既存の事業(プログラムやサービス)を異なる地域で再現することです。つまり、水平展開や複製です。「フランチャイズ」も事業の水平展開ひとつと言えますが、既存プログラムの成長とは異なります。別の場所でも実施可能で同様の成果を生み出すことができるように、事業の重要な特徴を理解し、特徴を忠実に再現できるように方法論を確立しておく必要があります。
NPOにとって、財政の拡大や職員の増員が成功ではありません。NPOの究極の成功はそのNPOがなくなる(解散する)ことです。つまり、社会問題が解決した状況、もしくは新しい価値観が浸透した状況であって、掲げたビジョンが実現した状況です。それぞれのNPOによって、成功や成長の考え方は異なると思います。一度団体内で議論してみてもいいかもしれません。