寄付者とコミュニケーションすることは、寄付受領から次の寄付依頼までにやっておく活動(スチュワードシップ)における重要なステップです。寄付者とのコミュニケーションには、活動紹介や活動報告といった「講義」だけではなく「会話」も必要になります。会話をすることで、寄付者をよく知り、長期的な関係を築いていきましょう。会話するときのきっかけになる質問を5つピックアップしてみました。
1. 当団体に初めて寄付をされたきっかけは何ですか?
この質問で寄付の背景にある動機に迫ることができます。また、この質問は過去を思い出してもらうための質問にもなります。「当団体にはじめて寄付したのはいつですか?」からはじめて、「当団体のことを誰から(何で)知りましたか?」「第一印象はどうでしたか?」「当団体のどこに惹かれましたか?」といった質問に展開し、動機を探っていくこともできます。
2.あなたにとって、当団体の活動のなかで最も重要な活動は何ですか?
この質問は、さまざまな活動(サービスやプログラム、事業)を提供している団体に特に効果的です。どの活動が最も共感されているのかを把握するのに役立ちます。焦点を絞った活動をしている団体でも、寄付者が団体に興味を持つ理由を理解するのに役立ちます。「当団体に期待する最も重要な成果は何ですか?」「最も誇りに思う当団体の成果は何ですか?」と言い換えて質問してもいいと思います。
3.他にどのような団体や活動を支援していますか?
日本には、NPO法人だけでも5万以上の団体があります。公益法人や地方自治体など寄付を集めている非営利団体はもっと多く存在します。そのため、寄付者は複数の団体を支援している可能性が高いのです。この質問をすることで、寄付者が寄付する際の方針や価値観を推測することができます。寄付者の多くから同じ団体名が出てくるようであれば、競合分析(ベンチマーク)に取り入れることや協力関係(パートナーシップ)を結ぶことも検討できます。
4.当団体について会社の同僚や友人など周囲の人たちに伝える機会があれば、どのようなことを伝えますか?
この質問で、寄付者が団体のことをどのように理解しているか確認することができます。団体の活動を伝える人もいれば、歴史(沿革)を伝える人、代表者や理事など組織について伝える人もいるかもしれません。その寄付者にとって重要だと考えていることがわかります。「当団体について、周囲の人たちに知ってもらいたいことは何ですか?」と質問してもよいと思います。
5.当団体について、何かご質問やご懸念、ご提案はありますか?
この質問は、寄付者に必ず聞いていたほうがよい重要な質問です。対処すべきこと、改善すべきこと、そのためのアイディアを知るためにも質問することは役立ちます。寄付者に意見を求めることは、肯定的な意見と否定的な意見の両方を受け入れることになります。団体の弱点になる可能性もありますが、弱点を克服する取り組みが信頼を築くことになります。自分たちが気づいていない長所に目を向けるきっかけになるかもしれません。寄付者から肯定的な意見をもらえた場合は、ウェブサイトやニュースレターで紹介し、さらに団体への関与度を高めてもらうこともできます。
質問項目は、少額寄付者、新規寄付者、継続寄付者、大口寄付者、寄付をやめた人など相手によって変わってきます。また、アンケート、個別訪問、グループインタビュー、電話ヒアリングなど方法によっても変わってくるでしょう。寄付者に質問をする目的は、寄付者ついてより深く理解して、寄付者の団体に対する期待を知ることにあります。そして、どのような取り組みをすれば、その期待に応えることができるのか考えることです。寄付者の意見は、団体運営やファンドレイジング、広報を見直すうえで、最も強力な手段となります。