寄付を受領してから再び寄付をお願いするまでの間、どのような取り組みをしていますか。寄付を受領した時から次の寄付の準備は始まっています。どのようなことに取り組む必要があるのか一度まとめておきましょう。
スチュワードシップという概念
この記事でご紹介することは一般にドナー・スチュワードシップや単にスチュワードシップと言われる取り組みです。スチュワードシップとは、英語で「(他者のための)処理、管理、運営、世話」を意味する言葉で、「受託責任/受託者責任」と訳されます。具体的には、NPOが寄付を受け取った後に行うプロセスのことで、寄付者を維持し、寄付者とより深く強力な関係を築くためのコミュニケーション全般になります。
感謝
寄付を受け取って最初にすべきことは感謝の気持ちを示すことです。寄付に限らずファンドレイジングにおいては、感謝は単なるマナーではなく活動のひとつと考えてください。活動ということは、感謝の計画策定や送料や印刷など予算を確保しておくことも必要になります。
少なくとも再び寄付をしたいと感じてもらいたいのであれば、オンライン決済の自動返信メールと領収書の発行だけでは足りません。オンライン決済の自動返信メールは、感謝というより確認です。お礼の言葉は、オンラインでの寄付を受領してもお礼の手紙は郵送するのがよいと言われます。手紙の余白や付箋でも構わないので手書きで一筆添えると感謝の気持ちを効果的に伝えることができます。「1回の寄付で、7回の感謝」と言われています。どれだけ感謝をしてもしすぎることはありません。会報(ニュースレーター)やウェブサイト、SNS、イベントなど様々な機会に感謝を伝えましょう。間違えてはいけないのは、匿名希望が感謝不要ということではないということです。
新規寄付者から寄付を受領した場合
団体に寄付の記録がない新規寄付者から寄付を受領した場合、団体のことをさらによく知ってもらうために、感謝のお手紙に加え、活動紹介パンフレットや会報、年次報告書などをセットにしたウェルカムキットを送ることも検討してください。新規寄付者を大切にしているという団体の姿勢を伝えることができます。
寄付者の意図や期待の確認
寄付者はなぜあなたの団体に寄付をしたのか、把握できていますか。また、寄付者があなたの団体に期待していることは何か、理解できていますか。支援者向けのアンケートを実施してみてください。代表や事務局長との座談会、活動報告会といった寄付者向けのイベントを開催し、寄付者に直接聴いてもいいと思います。会報やウェブサイトで寄付者を紹介することもあるでしょう。その取材の中で寄付者の意図や期待を聴くこともできます。
寄付者情報の適切な管理
氏名や住所、寄付受領日、寄付額といった、領収書を発行するために必要な情報の管理はもちろん、電話番号、メールアドレス、職業、生年月日、意図や期待、興味・関心なども把握できるとコミュニケーションや関係性の構築に活用できます。これからは寄付者のソーシャルメディアのアカウントも把握しておく必要が出てくるかもしれません。これらの情報は法律に則って適正に取得し、管理・保全することが求められます。分析が適切に行われれば、寄付者はどのような人か、寄付をする可能性が高い時期はいつなのか、どのような呼びかけに反応する可能性が高いのかといった潜在的な寄付者を理解する助けにもなります。
報告
おそらく寄付者は大切にしている人々(動物や植物の場合もあります)や地域社会を支援するため、気になっている社会問題を解決するために寄付しているはずです。このような寄付者の期待に応えるためには、活動の報告が不可欠です。忘れずに報告書を届けましょう。新規寄付者や少額寄付者にも、自分たちの寄付がどのような活動に役に立ったのかを知る権利があります。冊子として送れなくてもメールやソーシャルメディアで報告することができます。報告では、写真なども使いながら、寄付がどのようなポジティブな変化をもたらしたかを紹介してください。
苦情やお問い合わせへの対応
苦情への対応は決して楽しい仕事ではありませんし、苦情はないことが一番です。もし、苦情が来てしまったら、寄付者とコミュニケーションをとり、関係性を築く機会だと考えましょう。プラスな意見でも、マイナスな意見でも、何よりも寄付者の意見に耳を傾け、感謝の気持ちを忘れないことが重要です。寄付をしてくれた人に送るような感謝とは異なりますが、重要であることには変わりありません。
以上に加え、倫理の順守や次の寄付依頼まで含めることもあります。スチュワードシップは、寄付者を驚かせ、喜ばせる機会として取り組めるとよいのではないでしょうか。そうすれば、寄付者を維持できるだけでなく、ドナー・ピラミッドを一段一段確実に登ってもらうことができます。