故人の思いを寄付に託す支援を「遺贈寄付」と言います。故人にとっては人生最後の社会貢献である一方、NPOにとってはドナーピラミッド(寄付者ピラミッド)の頂点に位置づけられることが多い支援方法になります。遺贈寄付は「遺言による寄付」「相続財産からの寄付」「信託による寄付」の3つに分類されますが、多くの団体は「遺言による寄付」と「相続財産からの寄付」の2つを中心にウェブサイトに掲載していました。NPOは、この遺贈寄付をどのように伝えているのか、調べてみました。
遺贈寄付の流れ(図解)
遺贈寄付の紹介で目にしたのが「流れ(手続き)」の図解です。国境なき医師団の「遺言による寄付」では、「遺贈の意思決定・遺言執行者の決定」「遺言書の作成」「遺言書保管期間中」「ご逝去~遺言執行者への連絡」「遺言書の開示と遺言執行」「国境なき医師団より領収書と感謝状(ご希望の方のみ)を発行」の6つのステップを図解で説明しています。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンや日本ユニセフ協会、シャンティ国際ボランティア会なども流れが図解してあります。
よくある質問(Q&A)や留意点の記載内容
遺贈寄付の留意点として「遺言書の種類(公正証書遺言と自筆証書遺言)」「遺留分」「遺言執行者」に関して記載している団体が目立ちました。日本自然保護協会の「遺贈について(ご本人からのご寄付)」には、法定相続人の順位、法定相続の分割割合、遺言書(自筆証書遺言)の例などが丁寧にまとまっています。また、不動産や有価証券など「現金以外の寄付についての受け入れ方針」を記載している団体も多数見受けられました。
専門家との連携
遺贈寄付を受け付けるにあたり、まずは団体内に遺贈寄付の担当者(窓口)を設置することが重要になります。専門家と連携することも遺贈寄付に取り組む際は大切な視点です。「お近くの専門家にご相談ください」という文言がよくみられますが、中には専門家の固有名詞を挙げて紹介している団体もありました。たとえば、ジョイセフは、遺言書の作成の相談から遺言書の保管、相続手続きの代行などの業務について覚書を交わしている法律事務所と税理士法人が記載されています。また、日本赤十字社も提携先の税理士法人、法律事務所、コンサルティング会社が紹介されています。
遺贈寄付パンフレット(冊子)の発行
ウェブサイト以外に遺贈寄付パンフレットを発行している団体もありました。遺贈寄付を検討されている方は高齢の方も多いと想定されます。物理的な冊子を用意しておくことも必要だと思います。パンフレットを発行している団体をいくつか掲載します。PDFでパンフレットを確認できる団体もあるので参考にするとよいと思います。
「遺言による寄付」「相続財産からの寄付」以外の遺贈寄付
遺贈寄付として「信託による寄付」を紹介している団体は多くはありませんでした。私が見つけることができたのは、ワールド・ビジョン・ジャパンの「特定寄附信託」、交通遺児育英会の「特定寄付信託」の2件でした。
一方で、遺贈寄付として「香典・御花料による寄付」を掲載している団体があります。国境なき医師団・日本、日本ユニセフ協会、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、ワールド・ビジョン・ジャパン、日本自然保護協会など多数ありました。
まとめ
遺贈寄付は、比較的大きな団体、体力に余裕がある団体が先行して取り組んでいるように見えます。しかし、必ずしも団体の規模が大きくなければ遺贈寄付に取り組めないということではありません。「遺贈寄付を受け入れていること」を表明しなければ、お問い合わせも、お申し出もきません。遺贈寄付を検討する際は、他団体の事例研究から始める方法も有効です。先行事例・他団体事例をぜひ参考にしてみてください。