NPO法人にとって定款は法人の設計図であり、定款に基づいて意思決定されています。NPO法では、団体の私的自治を最大限に尊重して、理事会や事務局など柔軟に組織を設計することができます。今回は、NPO法人における事務局とその他の機関について定款から読み取りたいと思います。
NPO法人の事務局は、NPO法上、必ず設置しなければならないものではありません。業務量が少なければ事務局を置く必要はありませんが、多くの団体は理事会(理事会もNPO法上必置ではありません)と同時に、事務局を設置して日々の実務を託しています。法上は、最高意思決定機関が社員総会で業務執行機関が理事となっています。実質的には日々の意思決定は理事(理事会)が行い、業務執行は事務局が行っている団体が多いのではないかと思います。
事務局に関する記載
今回読んだ50のNPO法人の定款のうち、定款に事務局に関する記載がない団体が1団体ありました。49の団体の定款には事務局に関する記載があります。事務局に関する記載があってもその箇所には違いがありました。事務局に関する規定を記載している49団体のうち、事務局という独立章を設けて記載している団体が25団体、役員と併記して記載している団体が19団体、雑則に事務局に関して記載している団体が5団体です。
事務局の構成(職員)
「事務局長」に関する記載がある団体は39団体、「事務局次長」に関する記載がある団体は2団体です。「ディレクター」「チーフコーディネーターとコーディネーター」が1団体ずつありました。「所要の職員」「必要な職員」「その他の職員」を合わせて集計すると42団体です。1団体が「事務局長および職員は正会員とする」という条件を記載しています。
職員の任免者
職員の任免者について記載がある団体は46団体です。事務局長の任免者のみ記載は2団体で、任免者は「理事会」「理事長」がそれぞれ1団体です。事務局長とその他職員の任免者を分けている団体は7団体です。任免者を分けている場合の事務局長の任免者は「理事会」もしくは「理事会の承認・決議・同意を経て代表者が委嘱(任免)」としています。代表理事/理事長などの代表者がその他の職員の任免者となっている団体は41団体ですが、事務局長がその他の職員の任免者になっている団体が3団体あります。
役員との兼務・兼職規定
事務局に関する規定を設けている49団体のうち、役員との兼職規定を設けている団体は7団体です。理事と事務局長もしくは職員との兼職を認めている団体は4団体、常務理事と事務局長との兼務を認めている団体は3団体です。
ボランティアの明記
NPO法人の運営では、ボランティアも重要な位置づけにあると思います。定款でボランティアに触れている団体は2団体あります。ひとつめの団体は、<事務局>の章の(組織および運営)の項目で「事務局はこの法人の事業目的に賛同するボランティアの活動育成に努める」としており、もうひとつの団体は<役員および職員>の章の(事務局、相談役、ボランティア)の項目で「この法人は組織運営および事業活動へボランティアの参加促進に努めるものとする」となっています。
NPO法人のその他の機関
NPO法人では、重要な機関については定款に定め、その設置および権能を明確にしておいたほうが良いとされています。50団体のうち17団体が、代表者や理事・理事会に対して諮問・助言する機関を設置しています。機関名称は、「顧問・相談役」(13団体)、「委員会」(1団体)、「専門アドバイザー」(1団体)、「評議員および評議員会」(2団体)です。事業の円滑な遂行を図るための機関を設置している団体は、50団体中8団体です。機関の名称は、委員および委員会(企画運営委員会、専門部会、専門委員会、執行委員会、委員会・研究会・活動グループ)です。事務局長に代わり事務局長の機能担う「三者委員会」という機関を設けることができるとしている団体が1団体あります。支部や地域での活動母体について記載しているは2団体です。
※役員等の条項で「この会は、理事、監事、評議員および顧問を置く」という記載があり、評議員や顧問が役員であることが明確にわかる場合は上の集計から除いています。
実際は「使用人」にすぎない事務局職員、特に事務局長が業務上の豊富な情報量を背景に全体を取り仕切ることが多いのではないかと思います。社員総会と理事(理事会)は法律上の建て前と実際の間に隔たりがおこりがちです。さらに理事会と事務局の役割分担が団体によって異なったり、不明瞭であったりしています。皆さんの団体はどうでしょうか?