定款は、その法人の憲法とも言われ、法人の根本原則を定めた最高法規に当たります。NPO法人の運営・管理については、法律による縛りが少なく機関設計・業務執行はNPO法人の自治に委ねられ、定款自治が求められています。今回はNPO法人の定款から、理事会に関する規定を比較してみたいと思います。
特定非営利活動促進法(NPO法)上、理事会は必ず置かなければならない機関ではありません。NPO法では「定款に特別の定めのないときは、理事の過半数をもって決する」となっており、法人の事務の適正かつ円滑な執行を図るために理事の合議体として理事会を置くのが一般的になっています。理事会を設置する場合は、社員総会の規定と同様に、定款で理事会に関する規定を定めて、総会と理事会を明確に区別しておくことが多いのではないかと思います。
理事会の設置状況
今回対象にした50のNPO法人すべての定款に理事会の規定があり、理事会が設置されています。
理事会の権能
理事会の権能を「社員総会の権限に留保された事項を除き、理事の議決に基づき、この法人の業務その他の事項を決定する」(1団体)、「理事会は、第4条に定める事業ならび予算について責任を負い、執行の任に当たる」(1団体)としている団体があります。
多く見られたのが「総会に付議すべき事項」「総会の議決した事項の執行に関する事項」「その他総会の議決を要しない業務の執行に関する事項」の3点を規定することです。この3点のみを規定している団体は50団体のうち22団体です。
この3点以外に規定されているものとしては、「事業計画および予算」は17団体、「事業計画および予算の変更」「事務局の組織および運営」は16団体、「入会金および会費の額」は12団体、「長期借入金」「役員の職務および報酬」は11団体、「役員の選任、選出、推薦、解任」(そのいずれか)は7団体、「その他運営に関する事項」は6団体、「会員の除名」は3団体、「事業報告および決算」は2団体、「資産の管理の方法」「解散における残余財産の帰属」は1団体となっています。
「総会が開催されるまでの期間の暫定事業計画および予算の決定」を理事会の権能としている団体は3団体、「定款の執行について必要な細則」は2団体ありました。
理事会の開催
理事会の開催について、「代表理事(理事長)が必要と認めたとき」「他の理事からの請求があったとき」「監事からの招集請求があったとき」と規定しているのが一般的です。定款で理事会の開催について頻度を明記している団体は6団体ありました。具体的な記述内容としては「年2回以上」が2団体、「事業年度3回以上」「事業年度4回以上」「少なくとも3カ月に1度」「原則として月1回」がそれぞれ1団体です。理事会のオンライン開催(インターネット会議システムを使った会議)に関する規定がある団体は9団体です。
理事会の定足数
理事会が成立するための定足数を定款で定めている団体は、50団体のうち16団体です。理事(理事現在数、理事総数)の「2分の1の出席」が1団体、「2分の1以上の出席」が1団体、「過半数の出席」が10団体、「過半数以上の出席」が2団体、「3分の2の出席」が1団体、「3分の2以上の出席」が1団体です。
理事会の公開・傍聴規定
NPO法人の中には、定款で理事会の公開・傍聴規定を設けている団体があります。公開・傍聴規定を定めている団体は、50団体のうち3団体です。ただし、公開する相手は団体によって異なり、「会員に対して」「正会員に対して」「職員および会員に対して」となっています。
役付き理事や役員による機関
団体によって、代表理事や理事長以外の役付きの理事を設置していることもあり、役付き理事による合議体を設けている場合もあります。
今回定款を読んだ50団体のうち常務理事や常任理事を設置している団体は14団体あり、そのうち4団体が常務理事会や常任理事会を設置・規定しています。
常務理事会(1団体)の権能は「理事会提出議案の作成に関する事項、理事会の決議の執行に関する事項、その他理事会の議決を要さない常務に関する事項の協議」となっています。
常任理事会(3団体)の権能は、「理事会から委任された事項および理事長が緊急に処理すべきと判断した重要な事項を議決」「理事会の決定に従い、執行の任にあたる」「1.急を要する場合における業務の執行に関する事項、2.総会・理事会に付議すべき事項、3.総会・理事会の議決した事項の執行に関する事項、4.その他総会・理事会の議決を要しない業務の執行に関する事項の議決」となっています。
役員として評議員を設置している1団体は、評議員会の権能を「1.事業計画および予算の重要な変更、2.理事会が総会に付議すべき事項として議決しようとする事項、について、理事会の議決の前に、理事会に対して意見を述べ、提案する」としています。
上記以外の規定
上記以外では、理事会についても社員総会と同じような「招集」「議長」「議事録」などの規定を定款で定めている団体が多く見られます。
理事会はNPO法で必ず設置を求められている機関ではないため、決まった答えがあるわけではありません。また、NPO法人のガバナンス(統治)に「総会主導型」「理事会主導型」の明確な基準があるわけではありません。しかし、少なくとも「事業計画および予算」と「役員の選任・解任」を社員総会の議決事項としていれば総会主導型と言えますし、「事業計画および予算」と「役員の選任・解任」を理事会の権能としていれば理事会主導型と言えるかもしれません。
<シリーズ定款を読む>は、50のNPO法人の定款を「社員総会」「役員」「理事会」「事務局」「会員」の視点で読み比べてみる企画です。