以前の記事では、NPOと企業の関係はスポンサーシップからパートナーシップへ変化し、より多様になっていると説明しました。NPOと企業の関係は多様になっていることは事実ですが、改めて「スポンサーシップ」という古典的なNPOと企業の関係について考えてみたいと思います。
スポンサーシップとは
スポンサーシップとは「企業が特定のイベントやプロジェクト、プログラムにお金を支払う広告の形態」です。企業からスポンサー(協賛)を受けたNPOは、イベントやプロジェクトのタイトルに企業名を使用したり、イベントの資料やウェブサイトなどの広報物に企業ロゴやブランド名を掲載したりして露出を図ります。
スポンサーシップは今でも重宝されています。企業にとって寄付として支出するのは難しいけれど、広告費としての支出は比較的容易だからです。寄付は1円から社長決裁という企業も聞いたことがあります。金額にもよりますが広告費であれば担当部署の部長決裁で進めることもできます。
企業とのスポンサーシップを進める6つのコツ
1.企業をリストアップする
NPO関係者がすでに関わりを持っている企業をリストアップしておきましょう。理事や職員、ボランティア、会員は、企業とのつながりを持っているかもしれません。NPOの活動内容や活動地、理念に関係する企業を調べてみましょう。特定の社会問題に焦点を当てて社会貢献している企業もあれば、より広く地域社会に貢献している企業もあります。活動地に本社を構える企業だけでなく、支店や工場なども対象にするといいと思います。
2.メニューを設定する
スポンサーシップのメニューを作成します。スポンサーシップの価格帯ごとに、企業が受けられる特典(たとえば、広告の掲載場所や量、ボランティアの機会など)を明確にします。メニューは、Gold(ゴールド)、Silver(シルバー)、Bronze(ブロンズ)などスポンサーシップの価格帯に応じて名称をつけておきましょう。活動内容やイベント内容を強調するような名称にしておくとさらに印象に残ります。教育関係であれば、Principal(校長)、Scholar(学者)、Friend(友人)が考えられますし、環境関係であれば、Orchid(蘭)、Rose(バラ)、Tulip(チューリップ)といった感じです。メニューには、少額の価格帯や商品提供なども用意するとよいでしょう。
3.企業の期待を確認する
企業と面談の機会を得たら、企業がNPOに何を求めているのかを明確に把握することから始めましょう。企業の期待がわかれば、その期待に応える提案ができます。たとえば、企業は、NPOの会員や寄付者という社会貢献意欲の高い市民に、企業名やブランド名の認知度を高めたいと考えているかもしれません。別の企業は、NPOの理念の共通点を重視して企業理念の実現を目指したい、社員のボランティア参加を促進したいと考えているかもしれません。
4.NPOの理念を伝える
スポンサーシップは、一回限りの商取引ではありません。継続的な関係性を築きたいのであれば、企業の担当者や社員に自分たちの理念を理解してもらう必要があります。スポンサーシップが社会にどのように変化をもたらすのか、時間をかけてあなたの理念と活動を紹介します。スポンサーシップの内容だけなく、組織文化や価値観をお互いに理解することを目指してコミュニケーションをとりましょう。NPOが企業をATMのように扱い、お金にしか興味がないと思われないようにしましょう。
5.小さくはじめて、大きく育てる
スポンサーシップは、小規模なものから始めます。NPOと企業の関係は、時間をかけて成長し、発展していくものであり、最初から何千万円ものお金が飛び込んでくるものではありません。小規模なスポンサーシップは、お互いを知り合う機会であり、うまくいくかどうかを確認し、NPOが信頼できることを証明するステップとなります。
6.成果や効果を報告する
企業から求められなくても、NPOから進んでスポンサーシップの成果や効果を報告するようにします。露出の回数や対象(見た人)、イベントの参加者数、ボランティアの参加人数などの定量的な報告のほか、受益者のメッセージやイベント参加者の感想など定性的な報告も必要です。
企業のスポンサーシップを獲得することができれば、NPOのイベントやプロジェクトの信頼度や安心感を高めることができます。企業にはお金による協賛だけでなく、会場の無償貸出、商品の提供などもお願いすることができます。ぜひチャレンジしてみてください。