行動経済学に学ぶ寄付を増やすヒント

行動経済学に学ぶ寄付を増やすヒント

行動経済学とは、一見すると合理的ではない人々の行動について心理学と経済学を組み合わせて考える学問です。経済学というお金に関わる行動が研究対象になっているので、NPOのファンドレイジングに活かせるヒントがたくさんあります。代表的なものをご紹介したいと思います。

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2020.04.02

気持ちよく寄付をしてもらうヒント(出費の痛み)

行動経済学者の第一人者ダン・アリエリー教授は、著書でお金を手放すときの精神的苦痛である「出費の痛み」について説明しています。消費と支払いが同じタイミングだと、注目度が高いために出費の痛みが大きくなります。逆に、消費と支払いに時間差があると痛みは小さくなります。支払いの方法によって痛みの強さを変えることができるのです。気持ちよく寄付してもらうためには、クレジットカードや電子マネーなど痛みが小さい送金方法を用意しておく必要がありそうです。

郵便振込用紙での寄付を増やすヒント(極端回避性)

寄付には定価がありませんので、独自に寄付の値付けをすることができます。つまり、絶対的な基準がありません。そのような状況で役に立つ考え方が「極端回避性」です。極端回避性は、多くの人々は両端のものを選ばず、真ん中の選択肢を選んでしまうという傾向のことです。郵便振込用紙に寄付額の選択肢を用意するとき、選択肢は2個よりも3個にし、真ん中の選択肢をコントロールすることで寄付を増やすことができます。都度寄付の場合、気軽に支払える寄付の上限は10,000円程度と言われていますので、3,000円/5,000円/10,000円の選択肢を用意するのがお勧めです。

郵便振込用紙 の選択肢例
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2019.06.19

オンラインでの寄付を増やすヒント1(デフォルト効果)

オンライン募金も郵便振込用紙と同様に選択肢を用意しておくことは重要です。加えて、いずれかの選択肢にあらかじめチェックしておくか表示しておく初期設定をしておいてください。初期値や標準設定をデフォルトと呼びますが、デフォルト値は判断に大きな影響を及ぼします。このことは「デフォルト効果」と呼ばれ、人々はデフォルト値を団体のお勧めと捉え、わざわざデフォルト値を変えようとしない傾向があります。ある団体では「月々1,000円からできるマンスリーサポーター」から「月々1,500円からできるマンスリーサポーター」に変え、デフォルト値を変えることで寄付単価を上げることに挑戦していました。

1,000円/月から寄付ができますが・・・
初期設定(デフォルト値)は1,500円/月になっています。
オンライン募金システム導入の手引き

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2017.03.17

デフォルト効果はメールマガジンの登録者を増やす際にも使えます。「メールマガジンに登録を希望する方はチェックしてください」(オプトイン)と聞くのではなく「メールマガジンに登録を希望しない方はチェックしてください」(オプトアウト)と質問を変えるだけで登録者数が増えます。

オンラインでの寄付を増やすヒント2(社会規範/同調効果)

人々は他人の行動を見て、自分の意思決定してしまう傾向があります。多数派の行動を社会規範と考えて、それに同調しがちな性質をうまく利用したメッセージを検討してみてください。多数派となっている行動を伝えることで、寄付を増やせるかもしれません。寄付を呼び掛けているウェブページで「このウェブページを見た70%の方が寄付しています」と伝えることができるか考えてみてください。多数派にならない時もあります。そのような場合は割合より実数のほうが感情を刺激するとも言われますので、「このウェブページを見た3人に1人が寄付しています」というように言い方に工夫があるといいかもしれません。

会員を増やすヒント(代替報酬)

寄付や会費の「貧困がなくなる」「地球温暖化の防止になる」という見返りよりも、人々が興味や関心を持つ見返りを用意するだけで、人々の行動は変わります。このような良い行動につながる別の見返り(動機づけ)を「代替報酬」と言います。様々な団体が取り組んでいる会員特典は代替報酬と言えます。会員の満足感を高めたければイベントの参加費割引や購入割引と言った金銭的な特典が考えられますし、会員との関係性を深めたければイベントの優先予約権や特別な感謝状と言った非金銭的な特典が良いと言われます。

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2020.06.24

このほかにも、行動経済学には確実性効果や損失回避と言った「プロスペクト理論」や直観的な判断/近道による意思決定と言われる「ヒューリスティクス」など、ファンドレイジングに参考になりそうな興味深い研究がたくさんあります。数多くの書籍が出版されているので、ぜひ読んでみてください。私のお勧めは以下の3冊です。