大口寄付者の育て方

寄付総額の約80%は20%の寄付者から得られるとよく言われます。この意味で、大口寄付者はNPOのファンドレイジングでは無視できない存在です。一方で、大口寄付者のための活動を行うことができていないNPOも多いと思います。大口寄付者のファンドレイジングを考えてみたいと思います。

大口寄付の準備

「どの程度の寄付を大口とするか」を考えることから始めます。ひとつの目安が、1年間の寄付のうち寄付額(ひとりが複数回の寄付をしていれば、寄付者一人当たりの寄付総額を算出しておきます)の上位20%の中央値を過去5年分調べることです。ただし、どのような方法で大口寄付を定義しても、大口寄付は相対的なものであることを覚えておくことが重要です。ある団体では大口寄付とみなされるものが、別の団体では大口寄付とみなされないこともあります。

次に、寄付者リストから大口寄付をする可能性が高い大口寄付候補者を見つけ出し、リストアップします。ボランティアリストやイベント参加者リストなどを基に理事や職員にヒアリングしてリストアップすることもできます。NPOに大口寄付や遺贈寄付の専任担当者がいなければ、最初は10人程度のリストで十分です。関係構築ができる現実的な人数の大口寄付候補者リストを作りましょう。

ウェブサイトの寄付ページには大口寄付プログラムの情報・説明を記載しておきましょう。ウェブサイトには、大口寄付の目安金額、大口寄付のメリット、大口寄付が具体的にどのようにNPOへの貢献になるか、NPOの担当者連絡先などの情報を記載します。

関係の構築

寄付を依頼する前に、大口寄付候補者一人ひとりとその寄付の規模に見合う強い関係性をつくる努力が欠かせません。大口寄付をお願いするために十分な強い関係性を築くのに数カ月から数年かかります。数十万円から数百万円の寄付を考えている人に、その寄付がNPOの理念を実現するためには必要不可欠だと感じてもらわなければなりません。大口寄付候補者には、活動内容や成果への理解を高めてもらうだけでなく、NPOが適切な資金管理を行い、透明性をもって使われることを確信してもらう必要があります。

関係構築のための具体的な活動内容

担当者レベルでの面談
理事・事務局長を交えた面談
定期的な活動報告
オフィスツアーやフィールドツアー(見学会)
総会や理事会などへのオブザーブ参加
ボランティア体験
など

寄付を依頼するための関係構築となりますので、大口寄付候補者をよく知るためのヒアリングも必要です。少なくとも以下のことをヒアリングしてください。

価値観、関心事項、優先事項
過去の経験(職業上の経験、専門知識、価値観を形成するに至った経緯)
好みのコミュニケーション方法(電話、メール、SNS、対面など)

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寄付の依頼

大口寄付の依頼はタイミングがすべてです。関係を深めることができてはじめて寄付依頼を行います。NPOが望んでいることが、大口寄付候補者にとって正しいとは限りません。大口寄付候補者について知ったことを活かして、どのような寄付をしたいかを考えます。寄付依頼は、大口寄付候補者の状況や関心に合わせて、具体的な金額や資金使途を個別に提案します。

すべての候補者がすぐに依頼に応じてくれるわけではありません。残念ながら依頼を断られた場合は寄付以外の参加の機会を提案してください。ボランティアへのお誘いもよいでしょうし、専門知識がある候補者であればアドバイスを求めてもいいと思います。つまり、関係構築の段階に立ち戻ります。

感謝と報告(ドナー・スチュワードシップ)

寄付受領後は、いわゆるドナー・スチュワードシップに取り組みます。特別な方法で大口寄付者に感謝と報告をします。寄付の使い道や成果について最新情報を提供します。スチュワードシップは大口寄付者を喜ばせ、楽しませることです。誕生日カードや年賀状などのほか、大口寄付者限定コミュニティをつくり、寄付者同士の交流の機会を設けることも効果的です。

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大口寄付者を増やすためには、寄付依頼を行う前の関係構築が特に重要です。その秘訣は、時間をかけることです。時間をかけて、それぞれの大口寄付候補者のことをよく知り、関係性を築くために丁寧な努力をすればするほど、寄付を依頼することが容易になります。