収益事業とは商品やサービスの販売で財源を確保することです。NPOであっても、理念を実現するために収益事業を実施することができます。NPOの収益事業に関する考え方を整理したいと思います。
収益事業のメリット
収益事業による収入には使途に制限はなく、自由に使うことができます。収入をより得るためには参加者や受益者のニーズに敏感にならざるを得なくなり、商品やサービスの質が向上します。財源の多様化を目指す団体というイメージになり、知名度が向上していくことが考えられます。また、団体基盤が強化されることにもなります。
収益事業のデメリット
収益事業は、NPOが競合になるだけではなく、営利企業も競合になってきます。営利企業が行っている市場調査や事業計画の策定、財務予測などに取り組む必要が出てきます。理事やスタッフによる収益事業への理解、人材確保、先行投資や運営資金の確保なども必要になる場合があります。
既存事業を収益化する2つの方法
すでに取り組んでいる事業を収益化する方法があります。そして、料金をもらう方法は2つしかありません。ひとつは「参加者や受益者から料金をもらう」こと、もうひとつは「第三者から料金をもらう」ことです。
参加者や受益者から料金をもらう
イベントや講習会などの参加者に適切な料金を払ってもらうことで、心から商品やサービスが支援や役に立っていると感じている人たちだけに利用してもらえるようになります。よりサービスや商品に対して真剣さが増し、より良い商品やサービスを得るためにフィードバックにも意欲的になるという効果が期待できます。
受益者に料金を払ってもらうことも考えられます。少しでも受益者に料金に支払ってもらうことで、過剰な支援を避け、本来であれば自身でできることをやってもらうことになり、受益者の尊厳を保つこと(エンパワメント)にもなります。すべてを賄うことができなくても、一部を賄うことができます。
第三者から料金をもらう
NPOの理念の実現に関心がある第三者から料金をもらうことがもうひとつの方法です。行政や学校といった公的機関や民間企業などからの受託事業です。受託事業は、行政や企業との契約に基づく請負になります。NPOの理念よりも契約内容が優先になってしまうことには注意が必要です。
新しい収益事業を始めるには
すでに取り組んでいる事業の収益化が難しい場合は、新しい収益事業を考えることになります。収益事業を検討するには、いまNPOにあるリソースを整理し、少し違った角度から検証することが必要です。枠にとらわれず、発想を広めてみてください。
研修講師派遣
NPOには取り組んでいる分野の専門的な知識や経験が蓄積されています。このような専門性を活かして、研修講師の派遣を実施することができるかもしれません。ゼロから何かを作り上げるよりも、NPOが持つ専門知識や経験をカリキュラム化する収益事業のほうが理解を得られます。
コンサルティング
NPOが持つ専門性を活かす収益事業は、研修講師の派遣に限りません。NPOが持つ専門的なノウハウをパッケージ化することで、コンサルティングに取り組むことができます。コンサルティング料を設定することで収益事業になります。
検定や認定制度
NPO独自の検定や認定(公認)制度を作ることもNPOの専門性を活かした収益事業になります。検定料や認定料/公認料を得ることで収入になります。認定/公認の維持のための会費を組み合わせることで、支援性財源にも波及効果があります。
レンタルスペース
事務所に使っていない場所があれば、貸し出すことで収益事業になります。会議室の時間貸しや使っていないデスクを活用したシェアオフィス事業です。ビジョンやミッションとの整合性が問題となることが多いですが、ビジョンやミッションを共有できる立ち上げ間もない団体や学生団体に限定して貸し出すことができれば、この問題も改善されます。
収益事業によってNPOを運営できるようになると言うつもりはありません。市場の力では実現できない問題の解決や価値の創造に取り組んでいることに、NPOが存在する理由があると考えるからです。しかし、財源を多様化するという目的であれば、収益事業は検討する意味があるのではないでしょうか。