ミッション・ドリフトとは何か、ミッション・クリープとは何か

ミッション・ドリフトとは何か、ミッション・クリープとは何か

「ミッション・ドリフト」や「ミッション・クリープ」といった言葉を聞いたことがありますか?どちらもミッションと行動にギャップが生まれることを指します。どのようなNPOも歴史を重ね、成熟していくにつれ、活動開始の思いを見失ってしまうことがあります。ミッション・ドリフトやミッション・クリープの言葉の意味、その原因や防ぎ方を考えてみたいと思います。

ミッション・ドリフトやミッション・クリープの意味

ミッション・ドリフト(mission drift)とは、時間の経過とともに本来のミッションを見失ってしまうことを指します。ドリフト(drift)には、「漂流」という意味があります。ミッション・クリープ(mission creep)とは、本来のミッションから外れた新たな活動に広がっていってしまうことを指します。クリープ(creep)は、「緩慢な変化」という意味があります。ミッション・ドリフトやミッション・クリープは、ステークホルダー間での合意プロセスの有無や計画性の有無という点で、社会のニーズの変化に合わせてミッションを柔軟に進化させることとは異なります。ミッション・ドリフトであってもミッション・クリープであっても、本来のミッションでは新しい受益者、新しい支援内容、新しい活動地などが説明できなくなってしまいます。

ミッション・ドリフトやミッション・クリープの原因

ミッション・ドリフトやミッション・クリープが起こる原因はいくつか考えられます。原因のひとつは、そもそものミッションが明確でないことです。NPO自身が本来のミッションを明確に理解していない場合、脱線しやすくなり、他のことに目を向けやすくなります。

ミッション・ドリフトやミッション・クリープは、たいていの場合、危機的状況に陥ることをきっかけにして起こります。たとえば、財政難といった内部的な危機的状況を切り抜けるために、NPOは新たな資金を追いかけるようになります。自然災害への対応といった外部的な危機的状況は、本来のミッションからは離れた専門外や経験外の活動に関与せざるを得なくなりミッション・ドリフトやミッション・クリープが起こりやすくなります。

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ミッション・ドリフトやミッション・クリープは理事や職員、会員といったステークホルダーの提案から始まります。マネジメントの交代や支援者の期待の変化といった環境の変化で起こりやすくなると言われます。

ミッション・ドリフトやミッション・クリープは突発的に起こるものではないということが問題を難しくしています。ミッション・ドリフトやミッション・クリープは、日々の決断の積み重ねで起こることが多く、気が付かないうちに進行すると考えられています。

ミッション・ドリフトやミッション・クリープの防ぎ方

ミッションの策定・評価

ミッションが明確になっていなければ、策定する必要があります。ミッションが策定されていても、社会は変化し、ニーズも変化します。NPOは社会に合わせて進化・変化する必要があります。だからこそ定期的にミッションを評価することが重要になります。中期計画の一環として5年に1度程度のペースで、ミッションを評価することをおすすめします。中期計画を策定していなければ、ミッションを具体的な目標に分解し、測定可能な形にした中期計画を策定することもミッション・ドリフトやミッション・クリープの予防になります。

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ステークホルダーとのコミュニケーション

ミッションや中期計画を作成したら、それらを効果的に伝えることが重要です。理事、職員、ボランティア、支援者と共有し、全員がその重要性を理解していることを確認しましょう。総会やアニュアルレポート、ニュースレター、オリエンテーションなどで、ミッションを目に見える形で示し、その重要性を強調することが、ミッション・ドリフトやミッション・クリープを防ぐうえで大切になります。

ミッションを理解した理事会・職員

理事会はミッション・ドリフトやミッション・クリープを防ぐうえで重要な役割を果たします。理事会はリーダーシップを発揮することが求められますが、健全なリーダーシップは自己の利益や限られた仲間のためではなく、NPOのミッションのために発揮されます。もし理事会の行動がそのように見えなければ、ミッションを理解し、共有できる理事を選ぶことが重要になります。さらに、理事と職員、職員同士のコミュニケーションを常にオープンにし、ミッションを実現する上での自分の役割とその理由を全員が理解できるようにしましょう。

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ミッションに基づいた意思決定

日々の意思決定の積み重ねが、ミッション・ドリフトやミッション・クリープを引き起こします。ミッションに基づいた意思決定がミッション・ドリフトやミッション・クリープを防ぐ方法となります。新たな受益者に向けた新たな事業を決定するときや新たな資金調達を決定するときは、理事や職員だけでなくミッションを共有するステークホルダーも加えて意思決定します。

NPOのマネジメントは、「困っている人々の声に応えること」と「自らのミッションに忠実であること」のバランスをとっていかなければなりません。無計画にミッションから乖離した活動をはじめると、追加の資金や人材が必要になり、予算が圧迫される可能性が出てきます。職員や会員、ボランティアは混乱し、NPOに自分の時間を投資する価値があるのか懐疑的になってしまいます。活動は活発なのに職員やボランティアの流動性が高いと感じたら、ミッション・ドリフトやミッション・クリープを疑ってみてください。